○藤田さんはこの数年、すごく身体を動されてますよね。
藤田:
そうね、ここ数年、東京マラソンとかの影響もあって、
世はランニングブームって感じだよね。
「ランナーズ」なんて雑誌が新聞に広告出していたりして…。
でも、これは一時的なブームなんかじゃなくて、
「体を動かす」と いうのは世界的なトレンドかなって思ったりもする。
村上春樹さんだってそうでしょう。
ひと時代前だったら、小説家って書斎に閉じこもってるイメージだったのに、
冬はフルマラソン、夏はトライアスロン!
1Q84のヒロインだってジムのインストラクターだったりして、
小説世界にも反映してたりして…。

文藝春秋
○す、すごいですね!
藤田:
僕も毎日5キロくらい走ってるけど、
あの方は10キロ走っているらしい。
○本当に!?
そういえば藤田さんも大会に出てらっしゃるんですもんね。
藤田:
一回だけ。
20キロくらいは2時間以内で走りましたよ。
○尊敬…
藤田:
村上春樹氏曰く、小説ってもの事体は非常に不健康なんだけど、
それをねじ伏せて、ちゃんと着地させて
読者をグーーーッと惹きつける力ってのは体力がないとできないと。
○ああ、なるほど。
藤田:
それは絵でもなんでもおんなじことであって。
基本的な腕力というか体力、
それがないと成し遂げることはできないかなって思いますね…。
○それは先日twitterでもおっしゃっていましたね。
印象的だったので引用します。
「スピーディーで正確なパスがゴールを産む」
そんな事は皆頭では解ってる。
でも、実行出来る奴の前にしか未来は開けないよね。
正確でスピーディーなパス回しには集中力と収集力(情報)が重要。
それを維持するには体力が重要。
で、体力が無い人はピッチから退場となる。これが現実だと思います。
体力が落ちると、情熱、愛、はおろか気力もなくなりますね。
そんな人間がつくった、料理も絵も小説も人が喜ぶわけないですよね。
あと、何年かすると「風邪引きました」「お大事に」じゃなくて
「馬鹿野郎」てな時代が来るかと(笑)
藤田:
集中力っていうのは精神的なものって思う人多いじゃない。
でもさ、サッカーとか観ててわかるように体力なんだよ。
○ふむふむ。
藤田:
こういう仕事してたって集中力続かないってのは
疲れちゃったってことでしょ。
疲れなければ延々と集中力は続くわけだから!
○健全な魂は健全な肉体に宿るといいますしね。
藤田:
うん。よかったら読んでほしいのが
「行動主義 レム・コールハース ドキュメント」。
どんな本かっていうと、日本人の女性ジャーナリスト
(その人はシリコンバレー系の人なんだけど)が
レム・コールハースにくっついて書き上げた本があって。
○はい。
藤田:
ある日彼女が、車の助手席に座ったら、なんか湿ってて、
見たら濡れたタオルとか海パンが座席にあったんだって!
○海パンですか!?
藤田:
そう、世界中を飛び回って大きなプロジェクトをたくさん手掛ける
ものすごく忙しい建築家だけどプールに通ってたんだね…。
○それは自分の気力体力を維持するためにやっている。
藤田:
そう。僕より一回りくらい上だから、もう60幾つか。
○すごい。

TOTO出版
藤田:
ね、この体型をみてくださいよ。
○とても60代には見えない引き締まった身体です!
藤田:
うん、オッサンはかくあるべきって思うんだ。(笑)
○そういえばカール・ラガーフェルドも激痩せしてましたものね。
なんでもディオール・オムの細身のスーツを着るために
13ヵ月で42kgの減量したとか。一体何をしたんでしょう。笑
藤田:
建築家もね、椅子に座って動かなくて、
洋服はマオカラーなんて時代じゃないんだよ。(爆笑)
○ああ、そのイメージありますね…(笑)
藤田:
コールハースはLAのプラダのブティックなんかも手掛けているけど、
ミウッチャ・プラダみたいなモードの世界の人と付き合うには
細身の服がきれないと。(笑)

PRADAブティック外観(L.A.)
○作品だけでなく、本人からもそういう哲学というか
生きる姿勢のようなものが感じられないとダメなんですね。
藤田:
ていうか、建築みたいな世界ではタフでないと勝てないのかもね…。
昔の日本みたいにお金がじゃんじゃんあるから、
公共事業がんがんやりましょうって時代ではないからね…。
○うーん。
藤田:
6年くらい前かな、ちょうどオランダのスキポール空港に向かう
飛行機の中でこの人の本読んだんだけど、
けっこうテンション上がったよ(笑)
ううんん、オランダ、昔はフェルメール、今はレム・コールハースか?なんて。
○読んでみます。
藤田:
例えば、自分のアイデアに対して「どう思う、君?」って、
すぐ人に意見を求めるところなんかも面白かったね。
○ふーん、1人でガーッっと突き進むんじゃなくて柔軟な人ってこと?
藤田:
うん柔軟。そのうえ身体も鍛えてるでしょ。
インフルエンシャルって言葉があるけど、
ま、現代の影響力がある人物の一人であると…。
○お話を聞いているだけで背筋が伸びますね……。
藤田:
話題はかわるけど。30年前にPOLICEのライブを見たのね、
もう、三人で七人くらいの人が演奏してるような
分厚い音を出しててびっくりした!
センスとか技術は言うまでもないけど、
二時間くらい演奏してアンコール。
ドラムなんかずっと全力疾走って感じで…。
でも、それはまだ二〇代の頃の話なんだけど、
ある日テレビを見てたらBSでこの頃の還暦間近の彼等のライブを見たの。
で、驚いた事に演奏も体型も当時と変わっていなかった…。(唖然)
ま、そんなわけで、これからの日本は高度成長もなければバブルも無い。
楽して生きていけるような社会ではないって事は疑う余地もないわけだから
心してかからないと…。
てなわけで最後はこれで絞めるとしましょうか。
「Police 2007 – Message In A Bottle」
○勉強になるお話をたくさん伺えて楽しかったです。
どうもありがとうございました。