COMPETITION |
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審査員講評 ─装画を描くコンペティション 審査を終えて─ |
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今回の審査は、ともかく愉しくて心地のよいものでした。 なにしろ個性豊かなすばらしい作品が次からつぎへと目の前に登場してくるのですから、 審査員一同が感嘆の声をあげたのも一度ではありません。とくに三次審査くらいまで残った 作品というのは、かなりの水準をクリアしていたようです。 結局のところ最終的に選ばれた作品群は、どれもみな“書物”をみずからのものとして きっちり消化(もしくは昇華?)しきったということなのでしょうね。 なお、ここで個人的な見解を述べさせていただくなら、松山悦子氏、服部加津子氏、そして 橋本尚美氏の作品は、絵そのものが吸引力を持っており、さらに書物の把握力にもすぐれて いて、私の心に強烈な印象をもたらしてくれました。 もちろん他の方たちの作品も、それぞれのよさを備えています。ほんの少し視点を変えながら、 ぜひまた新たな取り組みに挑戦なさってみてください。
(石津ちひろ・作家) |
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一回目のコンペににもかかわらず九百二十点という応募の数は、本の装画に対するイラスト レーターの関心の高さを示すものだと思う。 イラストレーションのコンペというと、とかく目新しさや奇抜さが先行したセレクションが 行われがちだが、MAYAのコンペに関しては地力がなければ残れないものだった。 審査はセレクトする度に苦痛を感じるほどに全体のレベルは高く、手応えのある作品の数に 審査員冥利に尽きる時間をすごさせてもらった。 イラストレーションは相手に何を伝えるかのコミュニケーション手段のひとつである。 絵と個性が結びつき、それが鍛練され、完成度の高いイラストレーションとして昇華され、 イラストレーターが夢を与える職業として世の中に着実に根付くことを願っている。 今回選ばれなかった人も、上位6人の人達と大差ない位置にいたことを報告しておきます。
(坂川栄治・装丁家) |
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装画を描くということは、自分の好きな題材を好き勝手に表現するのと異なり、著作から 喚起されるイメージを如何に咀嚼して自己表現するかであり、その核となるメッセージを、 より多数の人にわかりやすく、印象的に伝えることこそが装画の意味性であり、役目である。 一次〜四次審査までは上記の基本条件とデッサン力や構成力、表現方法は様々でも目を捕え るパワーという共通のファクターを合わせ持つ作品を選ばせていただいた。 この時点で残った作品には大きな差はなく、後は、各審査員の、イラストはこうであって欲し いと考える方向性を重なりあって示している作品六作が最終に残った。 卯月さんの作品は、視点の面白さとさわやかでシャープなあたたかさに今様の新鮮さを感じた。 牧野さんの作品には、具象と抽象性がひびきあい、余分なものを削ぎ落とした画面に力強さと やさしさを感じさせる良質な仕上がりになっている。 堀内さんの作品は、一見のインパクトというより、ある種の品の良さを保ちつつ濃密な香りを 放ち、見るものを画面のなかに引き込んでしまう魅力に満ちている。他の作品も見てみたい。
(高橋千裕・新潮社装丁室室長) |
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このコンペは、新しいものだけを求めるのではなく、 どんな時代にも通用していく息の長いイラストレーション、こまやかで奥行きのある感性で 底力のあるイラストレーターを発見しバックアップしてゆこうと考えるものです。学生の方か ら、すでにいい仕事をしていらっしゃるイラストレーターに至る幅の広いご応募をいただきま した。 審査員それぞれの考えで審査をすすめましたが、 私個人としては私自身が今まで余り目にする 機会がなかったもので力のあるもの・・・を基本として選考させていただきました。 しかし 実際3次審査ぐらいからは質的に差がほとんどなく、4名の審査員もかなり苦しく迷い ました。作品とテキストのタイプがちょっと違うと感じられたために力が充分なのに外れた方 など後ろ髪のひかれる作品も多かったです。ただ集まった作品の持つ強いパワーには4名とも 感動し、レベルの高さと共に心に深く残りました。 本来一人ずつにコメントしたいところなのですが、ギャラリーハウスMAYAは、真剣にイラス トレーションにとりくむ人達にいつも門戸を開いております。 残念ながら今年は選外となった方も、どうぞまたチャレンジしてください。 (ギャラリーハウスMAYA・大矢麻哉子) |
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