中澤由美子展「eros de noir -FLUER-」

'04.03.29(月)〜 04.03(土)


外は満開の桜の花、ギャラリーには十四のモノクロームの花々が妖しく咲き乱れ、日の陰るころにはボサノバの弾き語りが始まる…と、中澤さんの久しぶりのMAYAでの個展には優雅で贅沢な時間が流れました。



百合、薔薇、菊、八重桜、チューリップ、アネモネ、ラナンキュラス、ニゲラ… ギャラリーに一歩足を踏み入れた瞬間、白と黒の濃淡で描かれた陰翳に富んだ花々から甘く濃厚な花々の匂いが香りたつような錯覚に捕われます。

使用画材はパステル木炭
もともと植物や食べ物などの静物に女性らしいエロティシズムを漂わせた表現を得意としていらした中澤さんですが、週刊誌の連載小説の挿絵を手掛けてから、モノクロームの作品にも本格的に取り組むようになられたとのことです。

モチーフを自分で撮影する、いつも中澤さんの制作はそこから始まります。自宅に飾られていた切り花や偶然みかけた道端に咲く花などを眼に写るそのままの姿で紙の上に描いてゆくのだそうです。
そこに力強い存在感が生まれるのは、作者の視点と画面の切り取り方に因るものなのでしょう。
また「モチーフが持つ存在を超越したニュアンスや感情などをくわえる気持ちで色を刷り込んでゆく」とも中澤さんはおっしゃいます。

こぼれ落ちそうな花弁や、見つめていると深く吸い込まれてゆきそうな雄しべと雌しべが作るサークル、柔らかなうぶ毛の生えた緩やかな曲線を描く茎…。
一切デフォルメされることなく描かれたその姿を前にして、自然が創り出す造形の豊かさに改めて心を動かされた一週間でした。

http://homepage.mac.com/yumikon/box/

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