田中鮎子展 「旅するこころ」

'03.11.24(月)〜 11.29(土)

二年前の初個展以降、カードショップやweb上でのポストカード販売、ジークレーの制作など目覚ましい活躍だった田中さん!中でも10月に念願だった挿し絵を手掛けた絵本の出版は、彼女の制作活動の大きなターニングポイントになったようです。今回は絵本の原画の中からも6点の絵を展示しました。


「星の欠片」

星の欠片をひろった。 ホテルのロビーで。
手のひらにのせるとほのぼのと、暖かい光のつぶがこぼれた。//

ここは小ぎれいな三ツ星ホテル。
特別めずらしい同宿客。
青白い廊下をすべるように歩くのはひとりの天使。
明日訪れるクリスマスイヴに
小さな奇跡を起こすため、わざわざ空からやってきた。

満室の宿屋はしかたなく彼に薄暗い物置部屋をあてがったけど、
あれれ、それはどこかで聞いたようなエピソード。
馬小屋ではないけどね。

だから天使は上機嫌で、星の欠片を振りまきつつ、
明日起こす奇跡をいたずらな笑みで思い描きながら
すべるように歩いていった。

(文/田中竜太郎)



「Maria」というタイトルで「半ば恋にも似た気持ちで描いた」という、さまざまな女性のポートレイトを描いた前回の個展。物想う彼女たちの姿は作者自身にもどこか重なり、内省的で静かな雰囲気の作品は多くの人の心を捉えました。

それから2年が過ぎた今回、残念なことに展示しきれないものも数点あったくらい、沢山の新作を描き上げていらした田中さん。ギャラリーには一層パワーアップした感のある作品がズラリと並びました。
画面から発するのびのびとしたオーラは以前よりサイズが大きくなった、という理由だけではないでしょう。
構図やモチーフなどにもバリエーションがグッと拡がり、物語的な要素もまた強くなった作品からは、田中さんのこれからのビジョン、方向性がはっきりと伝わってきます。

絵本 『星うさぎと月のふね』(文:かんのゆうこ/講談社刊)の原画と、弟さんの竜太郎氏の文章とのコラボレーションで構成された今回。一点一点に描かれたストーリーを「読む」ように、多くの方にじっくりと堪能していただきました。

オリジナル作品の他にもダイアリーなど見応えたっぷりのWEBサイトも是非一緒にご覧ください。
http://www.sakanaweb.com



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