市川智子展

「悪女としてのココ」

'02.10.21(月)〜 10.26(土)

「これまでは特にブランドとしての興味はなかった」という市川さんが展覧会のテーマにココ・シャネルを選んだのは、伝記を読んで彼女の生き様に深い感銘と共感を覚えたから。

1910年代、コルセットという窮屈な因習から女性たちを開放した彼女と、やはり最初は異質なものとして存在したけれど、今やパリの象徴となったエッフェル塔。 ココの生涯が、ほぼ同時代に生まれたエッフェル塔と共に、市川さんの視点と解釈のもとに文章とイラストレーションで描かれました。

数々のエピソードを持ち、多くの人々が語ったココの人生は、切り取り方によってさまざまな表情を見せます。彼女は『闘う女』、闘う強さを持った人が好きだ、と云う市川さんは「苛酷な思いをたくさんしただろうけれども、それでもとっても楽しい人生だったと思う!」とココの魅力を表現力豊かに語ってくれました。

“闘う建築家”(市川:談)、ル・コルビュジエの生涯をつづった『愛と哀しみのル・コルビュジエ』はインターネットにて連載中。
また現在静岡新聞では連載小説『ダイヤモンド・シーカーズ』(瀬名秀明・著)の挿絵を手がけるなど、今後も活躍が楽しみな作家です。






ココは今日、コレクションの招待客に強制的に新作の服を着せてしまうつもりな のだ。その服は目に見えなくて、でも一番肌にぴったりくっついて、誰にも脱が すことのできないもの。ココはナンバー・ファイヴと銘された小瓶から、その黄 色い液体を空気中に振りまいたのです。1921年、カンボン通りのココのサロ ンで香水が発表されました。

あら、これは、ローズの香りね。いえいえジャスミンの香りよ。わたしのは官能 的な麝香の香りがするわ。

ココがいたずらっぽくふりまいたその香りは、花そのものの香りではなく80種 類以上の成分を混ぜ合わせたもの。そして一人一人の肌の上でそのひと自身の香 りになるんです。ココは<女の子>という抽象的な香りをつくったのでした。そ してココは言います。

「香水をうまくつけない女性に未来はない」

それはたいへん。もちろんココのつくった抽象的な香りは、瞬く間にパリの街に ひろがります。そう、化学物質も使うことで大量生産も出来るようになったこと だし。なにしろココは稼がないと生きていけないので、これくらいのことは言っ ておかないと。


BACK