田島巳央展 「王国の住人」

'03.11.10(月)〜 11.15(土)

田島さんの一昨年に続いて2回目の個展です。以前より画面は大きくなり、そして多くの作品は額に入れずにマットのみ、とすっきりとした展示になりました。


「渡るもの」

二年前の初個展「デラシネ」では、風景の中に静かに佇む各々の人物たちの背後にある物語が感じられるようなノスタルジックな作品が並びました。
今回は物語性のある表現は以前と変わらないけれども、より柔軟に作品を前にした人々のイマジネーションを刺激する、静寂な空気感のある作品が並びました。

この2年の間、イラストレーションの仕事をしていくうちに表現の幅は更に拡がったようで、展示した作品でも構図やモチーフなどにバリエーションを持たせて様々なプレゼンテーションがされました。
そもそもは雑誌のモノクロ印刷のために描き始めたという、背景は描き込まずに暖色系や寒色系のワントーンの色彩による人物、静物画も好評。これからは人物の登場しない風景画にも挑戦していきたい、とのことです。

使用画材はアクリルガッシュ
版画用の厚手の紙に描いているのは絵の具を厚塗りするためなのだそうで、色を重ねて生まれた濃厚で独特な色彩感覚は彼女の作品の持ち味の一つです。
そうして描かれた「光」や「陰」はエッセンスとなって、絵の中の情景に不思議な魅力を落としていました。

「前回よりも、肩の力を抜いて制作が出来たと思う。」
ギャラリーに並んだ絵を前にした田島さんから出た一言です。作品を前にした私たちにも作者のそんな様子が確かに伝わってきた1週間でした。



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